アイドルは遠きにありて思うもの
そして切なく愛でるもの(楽しく歌うもの)
よしや
うらぶれて思慕の虜となるとても
溺れるものにあるまじや
ひとり異国の陽だまりに
アイドル思い胸騒ぐ
そのこころもて
遠きあの子を愛さばや
遠きあの子を愛さばや
そして切なく愛でるもの(楽しく歌うもの)
よしや
うらぶれて思慕の虜となるとても
溺れるものにあるまじや
ひとり異国の陽だまりに
アイドル思い胸騒ぐ
そのこころもて
遠きあの子を愛さばや
遠きあの子を愛さばや
このところ、ハロー!プロジェクトにおいても、”会いにいける握手会”攻勢が夥しい。まるで、某集団の模倣をしてまでも「追いつけ、追い越せ」という焦燥に駆られ、盲進しているように。
そうでもしなければ、CDの売り上げが伸びず、収益が上がらず、結果としてハロプロアイドルたちの活動(ツアー公演の回数や規模とか)が縮小してしまうという危機感にもがくアップさんの気持ちもわからないではない。
この詩は室生犀星の替え詩(かえうた)ではあるが、今の私の本心を吐露したものであり、上述のような姑息な戦略に対するアンチテーゼである。
いや、実はもっと卑下た、大都市圏でしかやらない握手会イベントに行くことが叶わない田舎モンの単なる僻みと羨望の裏返しかもしれない。たぶん、こっちのほうが当たっているんだろう。
心理学にいう「防衛機制」・・・どんなに欲しても享受できないものに対して、それが価値のない、つまらないものだと自分に言い聞かせ、思い込むことで、妬みや失望の束縛から逃れようとする、無意識の(あるいは意識的な)精神的自衛行為なのだと、不肖ながら自分でも認めざるを得ない。
しかしながら、それでも私は言いたい。ハロー!プロジェクトは、そんな姑息な戦略を使わないでほしいと。
ハロプロは、誰もが(アイドルファンも音楽業界関係者も)認める、ハイクオリティなパフォーマンス力で勝負するアイドル集団である。
だからこそ、その人気、世間的な認知、CDの売り上げなどは、その実力で勝ち取ってほしい。そうできるだけの力が彼女たちにはあるのだから。
あとは周りのオトナたち(プロデューサー、アップ、レコード会社など)が、いかにその魅力を世間に知らしめ、広めていけるか、そのための効果的かつ正当な戦略を構築し、実行しうるかにかかっていると私は考える。
実際、9期10期というフレッシュなメンバーを短期間に加入させ、グループ自体の大変革を敢行したつんく♂Pのひらめきは奏功し、着実に人気、注目度が増してきているのを感じている。
℃-uteは業界関係者やメディアでも、乱立するほかのアイドルを圧倒するそのパフォーマンス力の高さが確実に認められているし、スマイレージも、世間的人気のバロメーターと目される女子中高大生からの人気が急上昇しているのがライブ会場で実感できる。
イマドキのアイドルにおいては、握手会やら撮影会やらファンクラブツアーなど”アイドルと触れ合える機会”を提供するのが当たり前になってきているのは確かである。それもまた、世の(アイドル世界の)流れ・・・時代の要求なのかもしれない。
それでもハロプロは、そういう二次的手段によってアイドルヲタク心を惹き付けることに頼るのではなく、その飛びぬけた実力で真っ向勝負を挑んでほしい。それがハロプロファンとしての切なる願いである。
・・・とか、きれいごとを言ってはみたものの、芸能事務所や販売会社などアイドル業界を構築する”オトナたち”にとっては、アイドルも所詮、「アイドル産業」という名の商売。
華やかな世界に憧れ、夢を与えることに懸命な女の子たちも、彼らから見れば利潤を得るための”商品”であるのが現実。
投資した分以上の利益を上げるために、”商品”たちには若い体力の続く限り、ファンからめいっぱいのお布施を獲得する活動に奉仕してもらわなくてはならない・・・そういう考え、そしてそれを強行する活動はこれからも続くであろう。いや、増長していく可能性大である。
テレビや雑誌やネットなどで見慣れた、芸能界という異世界のカワイイ女の子と、直接手を握り合い、言葉を交し合う・・・そんな夢想のような体験に狂喜して熱を上げるアイドルヲタク・・・それは平成のアイドル業界が生み出した邪道であり、寂しい男共の欲望を無情に利用する搾取であり、アイドルの偶像性を貶める行為であると思えてならない。
自分の夢と希望に、そしてファンに夢と笑顔を届けることに青春を賭けている少女たちの真摯さを思うとき、その現実は一ファンとして、悲しく、切ない。
せめて、当のアイドルたちが、身を削るような握手会やイベントに明け暮れる日々を、「ファンと触れ合えて嬉しい!」と心から思ってくれていることを願うだけである。
負け惜しみの防衛機制から出た心情ではあるかもしれないが、「アイドルは遠きにありて思うもの」と私は本気で思う。
CDでその歌を聴き、DVDやネット動画でその躍動する姿を観て、コンサートでそのすばらしいパフォーマンスを直に体感する・・・それが本来あるべきアイドルファン活動であると私は信じる。
コンサートホールのステージと客席との距離・・・触れそうで触れられない別世界の存在。そう、まさにそれこそが、アイドルとファンとの最も快適な距離感だと信じるのである。